2014/05/25

時間の概念の違い Mタイム/Pタイムについて

取引先が返信の期限を守ってくれない。リマインドのメールをしても返信がこない。海外ビジネスにおいて、時間のトラブルは日常茶飯事であり、誰もが苦い経験をしているのではなかろうか。

入社当時 私はアメリカからの電子部品の仕入業務に携わったが、アメリカ人である彼らはよく期限を守ってくれた。遅れる場合でも、遅れる理由、期限の再提示をしてくれたものである。

だが、取引相手がアラブ諸国となると非常に苦労する。期限内の送金も守らず、音信不通になるケースも珍しくない。今回は異文化マネジメントの観点から中東ビジネスおける時間の感覚の違いについて考察してみたい。

1. Monochronic Culture versus Polychronic Culture

文化人類学者であるEdward Hall(1914〜2009)は時間の捉え方について二種類に分類した。

Monochronic(Mタイム)/Polychoronic(Pタイム)である。一般的にアメリカ、カナダ、北欧、日本などはMタイム、南米、中近東はPタイムとカテゴライズされる。
特徴は下記の通りである。

Mタイム
  • 時間軸が一つであり、一度に一つのことしかやらない
  • 物事は順序よく進め、約束は守り、時間に正確
  • Time is Money(時は金なり)
Pタイム
  • 時間軸が2つ以上あり、複数のことを同時に行う
  • 時間にルーズな側面があり、約束に遅れたりするが、人間関係を重視する傾向がある
  • 時間が無駄に感じることはない。
時間の捉え方の違いは、Results versus Relationshipsの概念とも通ずるものがあり、
Mタイムの人間は結果を重視する→時間軸が1つしかない→時間を大切にする→時間を守る
Pタイムの人間は人間関係を重視する→時間軸が複数ある→時間にルーズ
という図式が成り立つ。

メキシコの海外営業担当者によると、Pタイムのメキシコでの"tomorrow"は明日という意味ではなく、"not today"つまり"今日はできない"という意味で使われることが多いと聞く。時間の概念の違いを理解していないと厳しいものがある。

2.  アラビア語のイン・シャー・アッラーについて

アラブ諸国とのコミニュケーションにおいて、期日の設定の際に頻繁に使われる用語が"イン・シャー・アッラー"(もし神が望んだならば)である。

例えば 
「明日までに送金してくださいね。」「わかりました。イン・シャー・アッラー」
などである。

アラビア語のテキストでは、このフレーズに「必ず」という意味で訳されることが多い。だが、上述のようにPタイムの傾向があるため、慎重なコミュニケーションが必要だ。必ずしも"イン・シャー・アッラー"で約束が守られるとは限らない。

3. 理論(Theory)は地図である

以前のエントリでも述べたが、理論は"地図"に過ぎず、必ずしも現実と一致するわけではない。例えば中東諸国でもイスラエルについては、Result oriented cultureであり、Mタイムの傾向が強いし、そもそも企業文化/体質によっても時間の概念の捉え方は異なる。したがって、海外ビジネスにおける"地図の一つ"として今回のMタイム/Pタイムの概念を捉える必要がある。

以上、時間の概念に関するエントリでした。

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