2014/05/31

社会人のための語学学習について


過去の経験上、外国語ができるようにならない理由は下記2つであった。

1) 勉強法が適切ではない
2) 勉強量が足りない。

今回は1)の勉強法に関するエントリである。アラビア語、中国語であっても 語学学習には共通するコツがあり、正しい勉強をすれば誰でも上達する。
下記の通り、勉強法をまとめてみたい。

Step1. 勉強の目的を明確にし、学習のスコープ(範囲)を絞る

語学の学習に終わりはない。ネイティブレベルを目標にすれば、人生の半分は語学学習で終わってしまう。語学は単なるツールにすぎないのに、それらに多大な時間を費やすのはもったいない。

まずは自分の目的に合わせて、勉強するスコープ(範囲)を決めよう。

例えば英語であれば、海外との電話応対をするためなのか、プレゼンをするためなのか、家族との海外旅行なのか、英語面接の突破なのか、もしくは女性を口説きたいからなのか、これらを明確にする。

ポイントは細かくスコープを絞ること。

電話応対でも、先輩社員に海外からの電話を取り次げばいいのか、英語で納期回答ができればいいのか、価格交渉をすることが必要なのか。目的によって使う英単語も異なるため、よりシチュエーションを狭く設定した方が貴重な時間を無駄にしなくてすむ。

Step2. フレーズを丸暗記

勉強のスコープを絞ったら、関連フレーズを丸暗記しよう。

もし目的が「海外からの電話を先輩社員に取次ぐこと」
であれば、書店にいって電話応対のフレーズの書籍を3〜5冊ほど購入する。ここでも、すべてのフレーズを覚えるのでなくて、自分の目的に沿ったフレーズだけをピックアップし、気合で頭に叩き込もう。

暗記の仕方も、ただ”意味がわかる”というレベルではなくて、瞬時にフレーズを発信できるまで練習しよう。反復あるのみである。

ちなみに、私はEvernoteにフレーズをまとめている。
電話バージョン(英語)はこんな感じだ。


覚える際のポイントは、世界と言葉をつなげようとすること、つまり実際に使う場面を想像しながら声に出して覚えることが上達のコツだ。

Step3. 暗記したフレーズはすぐに使ってみる

暗記したフレーズをアクティブレベルまで引き上げるにはOutputが不可欠だ。覚えたフレーズはすぐに使ってみる。

普段 仕事で英語を使う機会のある人は、そこで使えばいいし、現在 留学中の恵まれた人は思う存分 現地でアウトプットしよう。

日本にいても語学を使う機会はたくさんある。中国語であればWechat、Weiboがあるし、英語であればオンライン英会話が充実している。

基本ステップ1〜3のサイクルを回していけば、必ず語学は上達する。

応用編 . 自分に関する1分間スピーチを作成する

フレーズを覚えただけでは、外国人との飲み会、パーティー、デートだとかに対応できない。フレーズで簡単なコミュニケーションはできるけれども、ディープな会話ができない。。。そんなときは「自分のことに関する1分間スピーチ」を作成しよう。

例えば趣味、出身地、愛読書、スポーツ、旅行経験、好きな映画、 好きな食べ物、自分の専門分野についてなどなんでもいい。 ビジネスパーソンであれば「自分が過去に何をしてきて、何に現在 問題意識があって、将来 何がしたいのか」を3分間で語れるとかっこいい。

語学はツールであり"話すコンテンツ"がすべてなので、発音がダメダメでも、相手から"この日本人は面白い!"と思わせたら目標達成である。私も引き続きがんばります。。。

以上、語学学習に関するエントリでした。

2014/05/29

海亀の行方について

留学時代に購入した本をパラパラみていたら、久々に海亀(Haigui)という単語が目に飛び込んできた。

本書では中国でイノベーションが起きやすい要素の一つに、「海亀が人材資源として機能していたこと」を挙げている。

今日は海亀の現状と彼らの行方について追ってみたい。

1. 中国における海亀とは?

中国語の"海外から戻る"という意味の「海帰(haigui)」の発音と、
「海亀(haigui)」が似ていることから、海外留学し自国に帰国する若者を海亀と呼んだ。
 海亀は海外で学んだ最先端のビジネスモデル、テクノロジーを自国に持ち帰ることから国内労働市場から貴重な人材として受け入れられた。

国内で起業する若者も多く、Baiduなどの検索サイトも海亀から生まれた。

中国経済の発展、イノベーションの裏には彼らの存在があったのである。

 2.  海亀は海帯(haidai 昆布)と化している現状

Economistの記事によると、最近では海亀は労働市場において力を失ってしまったようである。

景気後退、国内組の熾烈な就職戦争などにより、中国に帰国しても就職先がなく、就職浪人する学生が増えている。

最近では仕事が見つからない海亀を、海帯(haidai 昆布)と呼ぶことがある。(中国語の「待dai」を同じ発音の「帯dai」と置き換えた言葉)

現在は中国国内でも有力MBAが増えているし、国内で学んだ学生の方がアメリカ帰りの海亀よりも、中国市場に精通していることや、また企業文化についても合いやすいため、企業は国内学生を優遇しているとの声もある。

3.  海亀、海帯は世界で職を求めている

上記の現状から、最近では海外の大学を卒業したあとも、現地に残るケース、また母国以外で仕事を探すケースが増えている。

この現状は我々日本人にとっても、他人事ではない。

彼らは中国国内よりも年収を高く提示する日系企業にも就職先を求めて、門をたたいている。

日本の労働市場においては、「日本語」という壁で守られているものの、労働マーケットにおける彼らとの椅子取りゲームはすでに始まっている。

以上、海亀に関するエントリでした。

2014/05/28

市場が成熟するとカラフルな製品が増えるけど?

近年カラーマーケティングが注目を集めている。

Samsungは昨年度、UAE向けにブラウンゴールドのiPhoneを投入したし、タイでは家電メーカーがカラフルな色物家電で市場を開拓している。

一般的に市場が成熟化すると、製品の機能的な価値以外に、色やデザインなどの感性的な要素で付加価値をつける傾向がある。

 海外マーケティングにおいて、カラーの要素はどのような影響があるのだろうか。

まずは代表カラーの赤を例に考えてみよう。

1. 中国人の赤、アラブ人の赤は異なる?

一般的に中国人にとっての赤は、人気カラーの代表色である。

おめでたい色、金運をもたらす色、政治の色、情熱の色などといわれてきた。

ただし、国によってイメージや印象は全く異なる。

例えば、アラブ人にとって赤はあまり好まれない。一般的に赤は彼らにとって血、危険、悪などネガティブなことを連想させてしまうのである。 

2. 色の嗜好は時代によって変化する?

中国で人気の赤だが、最近は彼らの嗜好が変化している。
調査会社のエー・アイ・ピーによると、現在人気のトレンドは青であるようだ。


欧米や日本発の流行、韓国ドラマなど、外部からの影響によって色の好みが変化することが多い。

3. 効果的なカラーの選定条件

しかし、上記の調査においても、中国では今もなお、赤は根強い人気がある。

どの国でも、昔から人気のある代表カラーがあり、それらは当然 色の選定の際には重要である。例えば、サウジアラビアやエジプトでいえばゴールドである。

カラーの選定のポイントをまとめてみた。

選定の際の構成要素としては、1. 基本的な国の嗜好カラー、2. 流行トレンド、3. 競合他社と差別化になるような特徴カラーを考慮し、色を選定するのがポイントかと。

色によるマーケティングは関心分野の一つなので、今後も中近東、中国市場を中心にフォローしていく予定。

以上、カラーマーケティングに関するエントリでした。

2014/05/27

教養を語る人

社会人になってから学んだことの一つに「教養の大切さ」がある。

ここでの教養とはマルクスやケインズのような古典ではなく、

社会問題に対する知識、それに対する自分の意見である。


今回は自身の失敗談も交え、教養の大切さについて考えてみたい。


1. 車の中での出来事

 

社会人1年目の夏であった。


アメリカからのサプライヤの来日に伴い、彼らを空港からホテルまでピックアップする機会があった。


空港からの1時間半、現地のマネージャーと2人きりというシチュエーションは貴重であったが、すぐに話のネタがつきてしまった。


当時は緊張もあったし、自身の英語力不足ということもあったが、一番の原因は自分の教養/知識、意見のなさ”と分析している。

 

例えば、

 

・いま 何が世界で起きていて、何のトピックに問題意識があって、それに対してどんな意見をもっているのか。


・業界における日本市場はどうなっていて、何が問題で、それに対してどのような打開策・アイディアをもっているのか。

 

そんなコンテンツを相手にぶつけることができたら、自分の名前くらい憶えてくれたのにな、、、と反省した。


2. 接待、パーティー、社交の場で教養は活きてくる

 

ジャーナリストの池上彰氏が


海外のパーティーで日本人は話ができないといわれる。

残念なのは日本人は自分の意見や教養など語るべきことを持たないのを"英語ができないせい"にしている。


とコメントしていて、あぁ耳が痛いなと感じてしまった。

 

英語の発音がプアでも、コンテンツがあれば話を聞いてもらえる。


海外の人たちが普段どんな問題意識をもっていて、何がキーワードになっているか。また、それに対して自分はどう思っているのか。


一朝一夕には教養は身につかないが、日々アンテナを張りつつ仕事をしたいものである。

2014/05/26

貿易知識の重要性

海外営業の基礎として、「貿易知識の理解」が挙げられる。

会社によっては輸出部、海外営業部のように部署が分かれていたり、営業と船積み業務で職種が異なることも多く、直接は業務に関わらないのではなかろうか。しかし、海外営業においても、最低限度の貿易知識は必要である。

1. なぜ貿易知識は必要なのか?

国内取引と比較をすると、海外取引には多くのリスクが存在する。代金回収リスク、貨物の事故リスク、資金負担リスク、為替変動リスクなどがそれにあたる。

上記のリスクを如何に少なく、また回避をするために貿易取引では様々な仕組みが考えられてきた。営業活動においても、リスク回避の視点は重要であり、特に代金回収リスクは避けて通れない。

したがって、インコタームズ(FOB、CFR、CIFなど)、支払い条件 (前受け、後受け、L/C...)、輸出業務の全体像については、頭に入れておく必要がある。

2. 貿易実務、書類作成が嫌いな人へのヒント

書類の作成は非常に面倒であり、好きな人は少数ではなかろうか。書類の項目は細かいし、特にL/C関連の書類は一つでも間違えるとディスクレになる。しかし、書類作成は貿易用語を理解するチャンスでもある。

下記2点の視点を持つことで、貿易用語に対する理解を深めよう。

  • なぜその手続きが必要なのか?
  • その手続きは誰にとって、どんなリスクをカバーしているのか

例えばL/C取引であれば、輸出者にとっては代金回収リスクの回避、資金負担の軽減、
また輸入者に対しては商品入手リスクを回避している。

単調な仕事であっても、自分の仕事の意味、背景について考えると理解が深まるし、仕事も面白くなる。

3. 貿易用語は世界の共通言語

貿易用語は商用共通言語である。サウジ、中国、ロシア、どこでも同じ言葉が使用される。"言葉の意味がわかりません。。。"では話にならない。

海外の顧客から「次回からL/Cではなく、D/Aで取引したい!」と提案されても、怯まずに相手と交渉しよう。

以上、貿易知識に関するエントリでした。

2014/05/25

時間の概念の違い Mタイム/Pタイムについて

取引先が返信の期限を守ってくれない。リマインドのメールをしても返信がこない。海外ビジネスにおいて、時間のトラブルは日常茶飯事であり、誰もが苦い経験をしているのではなかろうか。

入社当時 私はアメリカからの電子部品の仕入業務に携わったが、アメリカ人である彼らはよく期限を守ってくれた。遅れる場合でも、遅れる理由、期限の再提示をしてくれたものである。

だが、取引相手がアラブ諸国となると非常に苦労する。期限内の送金も守らず、音信不通になるケースも珍しくない。今回は異文化マネジメントの観点から中東ビジネスおける時間の感覚の違いについて考察してみたい。

1. Monochronic Culture versus Polychronic Culture

文化人類学者であるEdward Hall(1914〜2009)は時間の捉え方について二種類に分類した。

Monochronic(Mタイム)/Polychoronic(Pタイム)である。一般的にアメリカ、カナダ、北欧、日本などはMタイム、南米、中近東はPタイムとカテゴライズされる。
特徴は下記の通りである。

Mタイム
  • 時間軸が一つであり、一度に一つのことしかやらない
  • 物事は順序よく進め、約束は守り、時間に正確
  • Time is Money(時は金なり)
Pタイム
  • 時間軸が2つ以上あり、複数のことを同時に行う
  • 時間にルーズな側面があり、約束に遅れたりするが、人間関係を重視する傾向がある
  • 時間が無駄に感じることはない。
時間の捉え方の違いは、Results versus Relationshipsの概念とも通ずるものがあり、
Mタイムの人間は結果を重視する→時間軸が1つしかない→時間を大切にする→時間を守る
Pタイムの人間は人間関係を重視する→時間軸が複数ある→時間にルーズ
という図式が成り立つ。

メキシコの海外営業担当者によると、Pタイムのメキシコでの"tomorrow"は明日という意味ではなく、"not today"つまり"今日はできない"という意味で使われることが多いと聞く。時間の概念の違いを理解していないと厳しいものがある。

2.  アラビア語のイン・シャー・アッラーについて

アラブ諸国とのコミニュケーションにおいて、期日の設定の際に頻繁に使われる用語が"イン・シャー・アッラー"(もし神が望んだならば)である。

例えば 
「明日までに送金してくださいね。」「わかりました。イン・シャー・アッラー」
などである。

アラビア語のテキストでは、このフレーズに「必ず」という意味で訳されることが多い。だが、上述のようにPタイムの傾向があるため、慎重なコミュニケーションが必要だ。必ずしも"イン・シャー・アッラー"で約束が守られるとは限らない。

3. 理論(Theory)は地図である

以前のエントリでも述べたが、理論は"地図"に過ぎず、必ずしも現実と一致するわけではない。例えば中東諸国でもイスラエルについては、Result oriented cultureであり、Mタイムの傾向が強いし、そもそも企業文化/体質によっても時間の概念の捉え方は異なる。したがって、海外ビジネスにおける"地図の一つ"として今回のMタイム/Pタイムの概念を捉える必要がある。

以上、時間の概念に関するエントリでした。

2014/05/18

第二外国語は必要か?

大学時代は英語学習に傾倒していて、第二外国語を全く勉強しなかった。この手の学習は一部の語学マニアのためにあり、それらに時間を投資するのは無駄であると考えていた。

誤解を恐れずにいえば、英語さえ出来れば、仕事でも通用すると思っていたのだ。

そんな英語びいきな私も社会人になり、実際にビジネスの現場に出てみて、第二外国語の重要性について改めて考えさせられた。今では中国語学習は3年目、アラビア語は3ヶ月目に突入した。

これは第二外国語の習得は"無駄ではない"というエントリである。(ただ、万人にはオススメしない。新しい言語を学ぶことはタフなことであるし、多大な時間を投資することになるからだ。学習のチョイスは慎重に。)

1. ビジネスにおける第二外国語を学ぶ意味

私はメーカーでの海外営業という職種柄、海外との接点は多い。現在は中近東に自社製品を拡販することがミッションである。

海外とのコレポンは9割が英語である。中国などの特殊な市場を除いては、顧客とは現地語ではなく英語でやり取りをするのが一般的だ。

ただ、海外出張で顧客とFace to Faceの打ち合わせをする際に、第二外国語はその威力を発揮する。挨拶、名刺交換、自己紹介、簡単なことでもいい。現地語で顧客と冒頭のコミュニケーションができるだけで、相手の印象が180度変わる。

特に華僑圏や中東地域は、ビジネスにおいて関係が重視されるため、現地語での挨拶は非常に有効である。文化に対する敬意につながるのだ。

2. 味の素の「3つの現」

食品メーカーの味の素の海外営業では「3つの現」が大事にされている。
それは、

1)現地語を話す
2)現地語の食を愛する
3)現地の人を愛する

というコンテンツである。

海外営業の仕事はかなり泥臭く、パートナーとの信頼関係がキーになる。文化の違いを乗り越え、関係を構築することは、机上のロジックを駆使してもなかなか上手くはいかない。

仕事をする上で、自分の担当地域の現地語を学ぶことは、上述のようにメリットになるはずだ。

※追記: 中国ビジネスにおいては、交渉においても現地語を使う機会が大変多いため、通訳者がいない場合、担当者の高度な中国語が不可欠である。挨拶や日常会話だけではなく、専門用語などの単語のビルドアップが必要になる。